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ゲーム条例 法廷闘争(第一審、第二回口頭弁論)のレポート

きしもと みつひろ
Japan
Mar 16, 2021

キャンペーンに賛同いただきました皆様へ

 

お世話になっております。

2021年3月15日、高松地方裁判所において、香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(以下、ゲーム条例)違憲訴訟の第一審、第二回口頭弁論が執り行われました。私も裁判を傍聴しました。

ただ、この日は、裁判の前に行われた、ゲーム条例に対して公募されたパブリックコメント(以下、パブコメ)の大量偽造疑惑が刑事告発されたことから、マスメディアはそれを中心に報じています。すでに第一回口頭弁論が行われている裁判と比べると、ゲーム条例関連の時事では「新しい動き」となるので、マスコミの仕事の特性上、これは仕方のないことと言えます。

今回のお知らせで紹介させていただく時事を報じたニュース記事は こちら からご覧いただけます。

 

(今回の口頭弁論にあたり、)原告側は、条例が憲法に反することが明らかなのに県議会が改正や廃止などの措置を怠っている、いわゆる「立法不作為」に加え、条例を制定したこと自体も違法だとする主張を追加しています。

―瀬戸内海放送のニュース記事より引用

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以下の文面は、原告の弁護士を務める作花 知志氏の裁判後ぶら下がり対応を参考に記載しています。正確さを期して本稿を作成していますが、解釈の違いが原因で、同じ場面に居合わせた別の方が記載した記事とは、表現の差異がございます。何卒ご容赦ください。

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[ パブコメの大量偽造疑惑では、何が罪と問われる可能性があるのか ]

具体的には、以下の2つの罪で立件できる可能性があります。

< 1.偽計業務妨害罪 >
 

偽計業務妨害罪:

刑法第233条で定義されている、虚偽の風説を流布し,または、偽計を用いて人の業務を妨害する罪。

流布とは、犯人自身が公然と文書や口頭で伝達する行為、または、口伝えに噂として流す行為。

偽計とは、人を誘惑し、あるいは、人の錯誤、不知を利用する違法な企みや手段。

業務とは、人の行う反復的な社会活動(営業・生産など、職業として行う経済活動を含む)。

(参照:コトバンク『デジタル大辞泉』)

 

「ゲーム条例に賛同している意思」を示すパブコメを大量に偽造することによって、「香川県内の民意はゲーム条例を圧倒的に支持している」と見せかけるため、香川県内の世論を故意に操作したことが疑われます。香川県内の世論を故意に操作したことが「虚偽の風説を流布」、前述の世論操作のためにパブコメを大量に偽造し、条例の制定に関する香川県議会の業務に悪影響を与えたことが「偽計を用いた」に該当する*1可能性があります。

作花弁護士の個人的な推測によると、これについては立件ができる可能性が比較的高い*2とのことです。

 

< 2.私文書偽造罪 >
 

私文書偽造等の罪:

刑法第159条で定義されている、他人の印章や署名を使用して、権利・義務に関わる文書、事実証明に関する私文書を偽造・変造する罪。また、偽造した印章・署名で私文書を偽造する罪。

私文書とは、公文書以外の文書で、権利、義務または事実証明に関する文書または図面。

権利・義務に関する文書とは、法律上の権利や義務を発生・存続・変更・消滅させることを目的とする意思表示を内容とする文書。借用証書、催告書などがこれに該当する。

事実証明に関する文書とは、実社会生活に交渉を有する事項を証明する文書。過去の判例によると、私立大学の入試の答案、求職のための履歴書などがこれに該当する。

(参照:コトバンク『デジタル大辞泉』、弁護士法人ALG「罪名別のお悩み -> 文書偽造罪」)

 

ゲーム条例に対するパブコメを大量に偽造する際、当人の許諾を得ずに他人の氏名を勝手に使用したり、実在しない人の氏名を使用したりしたこと*3が疑われます。パブコメの原本を精査することによって、この事実が判明すれば、立件が可能になります。なお、偽造と思われるパブコメの多くを受け付けたサーバーのログについては、私文書偽造罪の対象の特性で、ログファイルの内容を紙媒体に出力したものが精査の対象となります。」

< オプション:歳出の無駄遣い >

刑法で問うものではありませんが、パブコメの大量偽造を行う際に県の財政支出があったことが発覚した場合、香川県による不当な財務会計上の行為について、住民監査請求を通じた是正を求めることができる可能性があります。また、敷居は高くなりますが、それに関する住民訴訟を申し立てできる可能性があります。

ただし、これらの手段は、当該制度の使用条件が理由で、香川県在住者だけが可能です。

しかし、ゲーム条例に充てられた歳出の状況については、情報公開請求制度を使うことによって、日本国の在住者なら誰でも知ることができます。実際にこれを行う際は、こちら を参考にしましょう。

ただ、本稿を脱稿した時点では、刑事告発を行うための文書「告訴状」は、提出しただけの段階で留まっています。つまり、香川県警が正式にこれを受理するか否かは、まだ決まっていません。これについては、続報があり次第お伝えいたします。

 

[ 第二回口頭弁論にあたって、原告側が追加した訴状の内容について ]

主に、以下の3つの項目について追加を行っています。

< 1.ゲーム条例を策定した目的が不明瞭であること >

パブコメで香川県在住者やゲーム業界関係者に質した内容とも関係があります。

実は、何を対象としてゲーム条例に対するパブコメを募ったのか、また、何に対する対策を法令として定めるためにゲーム条例を策定したのか、それがまったく不明瞭です。具体的には

  • ネット・ゲーム依存という「状態」についてなのか
  • ネット・ゲーム依存症という「病気」についてなのか

の間で、解釈がブレています。ここはわかりにくい箇所なので、解説させていただきます。

ゲーム条例では「ネット・ゲーム依存症」という“『病気』の対策や予防について策定”がされています。

このことから、ゲーム条例の内容に対してパブコメを公募するなら

 

「ネット・ゲーム依存症という病気の対策や予防についてこんな法案を考えていますが皆様の(以下略)~」

 

と告知されていなければならないはずです。しかし、実際はそうではなく、パブコメは「ネット・ゲーム依存」という“『状態』について」公募”がされました。

このことから、パブコメは、ゲーム条例とまったく関係のない事柄について公募をしたことになります。ここで、パブコメの設定目的とゲーム条例の策定目的との間に齟齬が発生します。これは、その齟齬を解消すべく、次回の口頭弁論で、香川県側が「ゲーム条例は“ネット・ゲーム依存という状態”についてその対策を定めたもの」と論旨を展開しても、その時点で、論理的な矛盾が発生することを意味します

その事実があるゆえに、以下のことについて指摘ができます。

  • パブコメ自体がそもそも無効であること
  • パブコメが無効にもかかわらず、香川県民の世論を操作するためにパブコメの偽造を行ったこと
  • パブコメで公募対象者に質したこととゲーム条例を策定した目的との間にある齟齬が発生した原因を、香川県が一切調査していないこと

なお、WHOは、ビデオゲームのみを対象とした依存症をICD-11(国際疾病分類 第11版)へ登録しただけであり、かつ、病気と一切認定してはいません。それにもかかわらず、なぜ、「ネット・ゲーム」と一括りにしたうえに、WHOや厚生労働省ですら定義していないにもかかわらず病気として定義したのか、についても指摘ができます。

 

< 2.ゲーム条例が、原告の権利を侵害していること >

ゲーム条例の制定によって、原告であるわたるさんとその家族の方が、本来は費消する必要のなかった、同条例に基づくITサービスの使用方針を話し合う時間的なリソースを費消する羽目になったことや、わたるさんの将来の展望に関する選択肢を制限させたこと、そして、わたるさんがビデオゲーム等の個人向けITサービスを使用して得られる幸せな時間を簒奪したことが挙げられます。つまり、ゲーム条例が原告の幸福追求権などの諸権利を侵害したことについて、補記をしているとのことです。

このように、わたるさんを含め、ゲーム条例は、香川県在住の18歳未満の人の人権(幸福追求権など)を侵害している恐れがあります。

実は、人権を侵害する方向で作用する法令の策定にあたっては、その法令の制定によって萎縮効果を生じないよう、また、誤って不利益を受ける者が生じないよう、規定の内容を明確に定めなければならないルール4* が設けられています。この法律の策定時のルールは「明確性の原則」と呼ばれます。つまり、ゲーム条例は、「明確性の原則」に違反した法令といえます。

これについても、補記をしているとのことです。

 

< 3.ゲーム条例を策定したこと自体に対して問題があること >

香川県議会がゲーム条例を改廃しない「立法の不作為」に関すること、また、第一回口頭弁論にて、裁判官から提案のあった「ゲーム条例を制定したこと自体に関する問題」について、補記をしているとのことです。「立法の不作為」については、ゲーム条例の内容が、日本国憲法第94条で定義された「地方公共団体が策定する条例の内容に関する制限(法律の範囲内で条例を制定しなければならないルール)」を逸脱しているにもかかわらず、それを香川県が一向に修正しようとしないことについて、争点としています。

 

[ 作花弁護士からのコメント ]

ゲーム条例が現状のままで存在する限り、わたるさんだけではなく、ゲーム条例によって損害を受けた香川県在住者、および、世界中のビデオゲーム関連ハードウェアやソフトウェアの開発、流通、販売、ゲームのプレイに伴う通信データの送受信を担うITインフラ関連事業者*5が、国家賠償請求訴訟を起こすことができます*6。

よろしくお願いいたします。

[ Comments from plaintiff lawyer ]

As long as the Kagawa Prefecture Internet and Video game Addiction Countermeasures Ordinance exists as it is, not only Mr. Wataru, but also Kagawa Prefecture residents who have been damaged by this ordinance, and video game related hardware and software around the world. IT infrastructure-related businesses *5, which are responsible for the development, distribution, sales, and transmission and reception of communication data associated with game play, can file a state redress lawsuit based on Japanese laws and regulations *6. Thank you.

 

レポートは、以上となります。

次回の審理は、2021年6月14日、11:00に開かれる予定です。可能でございましたら、ぜひ、裁判の傍聴に訪れていただきたく存じます。

 

[ さいごに ]
 

以前のお知らせ でも示しましたが、ゲーム条例は、もはや香川県限定の問題ではありません。このことから、ぜひ、機会を設けて、ご家族や知人らとゲーム条例の問題点について話し合うことをお勧めいたします。もし、可能であれば、本キャンペーンにおける署名への協力を依頼していただければ幸いです。

どうか、よろしくお願い致します。

 

主催者 きしもと  みつひろ

 

[ 参考資料 ]


*1作花知志様のツイートに基づく(https://twitter.com/sakkacom/status/1371374829140512769

*2作花知志様のツイートに基づく(https://twitter.com/sakkacom/status/1371361005830213637

*3 瀬戸内海放送のニュース記事より引用(https://news.ksb.co.jp/article/14269850

*4 Wikipedia「明確性の原則」

*5 香川県ネット・ゲーム依存症対策条例 第11条に基づく(https://www.pref.kagawa.lg.jp/documents/10293/0324gj24.pdf

*6作花知志様のツイートに基づく(https://twitter.com/sakkacom/status/1371827112508755972


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