東京藝術大学の学費値上げの撤回と、説明会の開催を求めます。
東京藝術大学の学費値上げの撤回と、説明会の開催を求めます。
東京藝術大学は、2018年10月26日にホームページで、今年度(2019年度)からの入学生を対象に、学費を約54万から、20%増やし約64万にすると発表しました。更に来年度からは大学院等も同じく増額となります。
しかし在学生に対して連絡は一切なく、ホームページの説明文を読んでも、経緯や額の決定・公表時期の理由など、多くの不透明な点があります。報道で初めて知った学生もおり、誠実さに欠けています。
私が担当の戦略企画課に赴き、個別に説明を求めたところ、メールなどで周知を行わなかった理由については、値上げの対象ではない在学生に対し説明を行うと、学費が上がると誤解し、混乱を招く可能性を危惧するということや、在学生にのみ通知をしてしまうことは情報公開の公平性に欠けるということを挙げられました。20%である正当性については、ホームページの説明を引用しながらうやむやにされました。説明会を行う予定はないとのことです。学費の値上げが適用されるのは、現在まだ在学生ではなく、合格するかどうかも分からない受験生と言われ、そのような方々を対象にした説明の必要性も、担当者はあまり感じていないように見受けられました。「説明会を行わない」とは言われませんでしたが、結局のところ内部にも外部にも説明の必要はないと言っているに等しく、大学の一方的な押し付けであると言わざるを得ません。
他の学生が戦略企画課にメールで質問状を送付した際には、返信内容の多くがホームページに書かれた文章と同じようなものとなっておりました。経緯の確認に対し、学内規則等に準じ適切に行われたというばかりで具体性に欠け、質問に答えたとは到底言えないものになっており、大変不誠実です。
在学生の間では、説明がされていないことにより様々な憶測が飛び交い、混乱が起きています。なぜこの時期なのか、どこの意思で決定されたのか(教授らが容認したのだろうか…)とか、値上げの分の収入が、設備の拡充に使われるのか、新たな学科設立のために使われるのかといった具体的な用途や、実技強化に重点を置いていない芸術学科や楽理科への案は何かという疑問が上がりました。
私は、大学の収入の多くを占める運営費交付金(文科省が国立大学法人に交付するもの)が年々減っているため、その穴埋めのために増額するのではないかという疑問を持っています。例えば財務省は2031年度まで運営費交付金を毎年1%削減し、自己収入(学費も含む)を毎年1.6%増加させ、運営費交付金への依存と自己収入を同じ割合とする長期試算を提示しています。戦略企画課からは、消費税や電気料金の値上げによる負担増の話もありました。経済的支援の充実により、大学の自己収入から学生に手当てを講じることも含めると、値上げによって教育研究体制やサポート環境をどれくらい拡充できるのか疑問に思います。
値上げによって大きな影響を受けるのはまだ入学していない受験生や、これから大学院等に進学する学生たちです。ホームページには、経済的に厳しい学生への支援を拡充すると書かれていますが規模は不明です。減額の措置も受けられない人は、10万円の値上がりは仕方がないのでしょうか?教育の機会均等を損なわないようにとも書かれておりますが、そもそも学費を上げるということは、経済的格差を広げ、教育の機会均等を奪うことになってしまうのではないでしょうか。国際人権規約にも逆行しており、私は学費を値上げするよりも、OECDの統計データに見られるような、日本の教育にかける公財政支出の少なさを改善していくように求めるべきではないかとも思います。
私たちはこのような決定を認めるわけにはいきません。値上げの撤回と説明会の開催を求めます。
①値上げの撤回
- 既にホームページで公開されていますが、このような強引な方法は認められません。順序が間違っています。撤回して下さい。
②説明会の開催
求める内容例
- 値上げ分の具体的な用途
- 決定までの経緯
- 20%の正当性
このような説明会は求めません
- ホームページにある文章の再読に終始するもの
- 受験生が合格してから行います。というような事後的なもの
- 「適切に審議しました」というような具体性に欠けるもの
参考資料
教育研究環境整備のための授業料改定について:東京藝術大学ホームページ
https://www.geidai.ac.jp/news/2018102671472.html
入学料・その他諸経費について (美術学部・大学院美術研究科):東京藝術大学ホームページ
https://www.geidai.ac.jp/life/entrance_fee/fine_arts
経営協議会について:東京芸術大学ホームページ(平成29年1月26日から授業料値上げについての話が持ち上がっています。)
https://www.geidai.ac.jp/outline/organization/admin_council
国立大学の授業料、15年後は40万円増の93万円に値上がりか…文科省試算:resemom
(財務省が運営費交付金の削減等について長期試算の提示をしていました。)
https://s.resemom.jp/article/2015/12/04/28332.html
財務省の財政制度分科会(平成27年10月26日開催)資料2 文教・科学技術:財務省
(24、25ページが該当箇所です)
財政制度等審議会における財務省の見解に関する声明:国立大学協会
(運営費交付金の扱いなどに対するものです。リンク先、下のPDFファイルをご覧下さい。)
国立大学法人の現状と今後の運営費交付金の在り方について:文科省
(OECD各国の中でも日本は高等教育機関への公財政支出が著しく低いということなど。)
国際人権規約:外務省
(第13条2のcが該当箇所です。)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kiyaku/2b_004.html
日本再興戦略:首相官邸
(閣議決定したもの。今後10年間で世界大学ランキングトップ100に我が国の大学が10校以上入ることを目指す。運営費交付金についても言及あり。主にp36)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/saikou_jpn.pdf
教育再生実行会議:首相官邸
(上記PDFで紹介されている団体です。構成員は内閣総理大臣など。提言や資料もご覧下さい。)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/
学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律:文科省
(学長主導の大学改革と教授会の役割などについて書かれています。)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/kakutei/detail/1349263.htm
国立大学の法人化をめぐる10の疑問にお答えします!:文科省
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/houjin/03052702.htm
2018年度予算案・2018年度予算案の構成:jiji.com
https://www.jiji.com/sp/graphics?p=ve_pol_yosanzaisei20171222j-02-w680
授業料値上げについての新聞記事です。学生や、教授の話が載っています。:しんぶん赤旗
一つ目は記事画像への直リンク
https://t.co/dJKLCFISzW
こちらはその他も含めたウェブページです。
https://t.co/JqfGhYRkqM
平成30年度東京芸術大学美術学部の入試説明会:YouTube
(URLは彫刻科のものですが、他の科もご覧になれます。)
人づくり革命:首相官邸
(高等教育無償化についての案が提示されていました。掲載箇所は、基本構想、平成30年6月13日人生100年時代構想会議とりまとめの本文PDF中、第3章です。第4章も宜しければご覧下さい。)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/jinsei100nen/
国立大学法人化後の財務・経営の実態に 関する研究:大学改革支援・学位授与機構
https://www.niad.ac.jp/publication/sonota/pub_zam/report/n000i006.html
授業料改定にともなう修学支援奨学金(給付型)について:東京芸術大学ホームページ
意思決定者(宛先)
- 戦略企画課