学長選考会議の権限強化に反対します―これ以上、大学を壊さないでください!

学長選考会議の権限強化に反対します―これ以上、大学を壊さないでください!

開始日
2021年3月4日
現在の賛同数:7,537次の目標:10,000
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この署名で変えたいこと

署名の発信者 大学の自治の恢復を求める会

 政府は、3月2日、国立大学の学長を選ぶ「学長選考会議」の権限を強化して「学長選考・監察会議」とする国立大学法人法改正案を閣議決定し、今国会に提出するとしています。(『朝日新聞』3月3日付『日本経済新聞』3月2日付)。わたしたちは、学長と学長選考会議の権限をむしろ縮小して限定すべきという立場から、この改正案の廃案を求めます

 国立大学の学長による不正や不適切な言動が注目を集めていますが、その学長を選出したのは学長選考会議です。政府は、学長選考会議が教職員の意向にかかわりなく学長を選ぶことを求め、教職員による「意向投票」を「意向調査(聴取)」と改めさせました。昨年、京都大学では「意向調査」で過半数を獲得した候補者がいなかったにもかかわらず選考会議は決選投票を行わず、東京大学では選考会議が「意向調査」の対象となる候補者をあらかじめ不透明な形で絞り込み、筑波大学では選考会議が「意向調査」において大差で敗れた現職学長の再任を決めました。さらに選考会議は学長選出の権限ばかりでなく、その解任を文部科学大臣に申し出る権限をもち、実際に北海道大学では学内外への説明も行わないままに密室で解任の方針を定めました。

 せいぜい10数名の選考会議委員にかくも大きな権限を持たせ、数千名に及ぶ教職員や学生の意向よりも優先させる仕組みは、あまりにも非民主的です。今回の「改正」案では学長選考会議の委員に学長は加えることはできないようにするとしていますが、それでも選考会議委員の選出母体(経営協議会・教育研究評議会)のメンバーの大半を学長が選出することになっているために、「学長が選んだ少数の委員が次の学長を選ぶ」自己完結的な仕組みに変わりはありません。また、「改正」案では監事による学長監視の機能を強化するとしていますが、監事は文科大臣が任命することになっていますから、文科省の意向や都合から独立した判断・決定ができるとは考えられません。大学の構成員から何のチェックも受けない選考会議や監事の権限をどれだけ大きくしても、学長を含む大学執行部の暴走は抑えられません

 実際、大分大学や福岡教育大学では独裁的な権限を掌握した執行部が評議員や学部長、さらに教授の人事までも左右し、教授会など専門家同士の合議(ピア・レビュー)による人事という慣行を脅かす事態さえ生じてきました。教職員は管理体制の強化による恐怖政治の下で、こうした呼びかけに名を連ねることもためらわざるをえない環境におかれています。学生たちも高い授業料を払わされているにもかかわらずステークホルダー(利害関係者)としては最下位に置かれ、自分の頭で考えた意見を大学運営に反映させる機会を奪われています。政財界の有力者を選考会議の「学外委員」として招き入れる一方、学内の構成員の意見を黙殺する体制は、すでに十分なまでに大学を壊してきました

 政府のなすべきことは、選考会議や監事の権限を強化することではありません。むしろ大学という組織の特性を無視した「ガバナンス改革」の流れを根底から見直し、教職員、学生の意見を幅広く吸い上げ、大学運営に生かせるような制度改正を行うことです。わたしたちは、選考会議の権限を強化する閣議決定に反対し、廃案を求めます。同時に、大学の構成員による「意向投票」の結果に基づいて学長を選出する仕組みを作り直し、構成員の過半数の請求により学長および選考会議の委員を解任できる制度を整えることを求めます。

 全国の大学教職員、これまで大学で学んだ、いま大学で学び、これから大学で学ぶすべての人びと、大学で学びたいと思いながらその機会を持てなかったすべての人びとに訴えます。これ以上、大学を壊さないでほしいという声にご賛同ください。

呼びかけ人(50音順、3月11日現在)

  • 阿部公彦(東京大学)
  • 江頭理江(福岡教育大学)
  • 越智博美(専修大学)
  • 大河内泰樹(京都大学)
  • 河かおる(滋賀県立大学)
  • 鬼界彰夫(筑波大学〔名誉教授〕)
  • 喜多加実代(福岡教育大学)
  • 河野真太郎(専修大学)
  • 小林博也(旭川医科大学)
  • 駒込武(京都大学)
  • 佐藤学(学習院大学〔特任教授〕)
  • 鈴木泉(東京大学)
  • 竹田扇(山梨大学)
  • 田中純(東京大学)
  • 鶴成久章(福岡教育大学)
  • 二宮孝富(大分大学〔名誉教授〕)
  • 光本滋(北海道大学)
  • 山田寿彦(元毎日新聞記者)

呼びかけ団体(50音順、3月11日現在)

関連リンク(3月12日現在)

[附記]

3月11日、「呼びかけ人」に光本滋さんのお名前を加えました。また、新たに「関連リンク」の項目を設けて「2020東大総長選考を考える」「北大クライシスを憂う会」を加えました。

3月12日、「関連リンク」の項目に「福岡教育大学の再生を願う教員の会」を加えました。

3月30日、「関連リンク」の項目に石原俊「安倍前首相の地元・下関で先鋭化する「大学破壊」。理事会の独裁、学長専決の教員採用…全国に波及も」と「下関市立大学・飯塚靖先生の理事解任に抗議し撤回を求めます」(2021年3月25日)を加えました。

4月26日、「関連リンク」の項目に緊急オンライン院内集会「国立大学はどこへ行く?-国立大学法人法改正案の問題点を考える-」(2021年4月19日)、「国立大学法人法の一部を改正する法律案に対する附帯決議」(2021年4月21日、衆議院文部科学委員会)、石原俊「「学長暴走」容認システムをどう変えるか。国立大学法人化後「17年間で“150度”変わった」制度の歪み」、「国立大学長選考の混乱、各地で 法改正での収束、疑問の声」『朝日新聞』2021年4月26日付を付け加えました。

5月8日 「関連リンク」に「国立大学法人法改正案への提案」を加えました。5月9日(日)に賛同者募集を停止し、5月11日(火)に文科省に提出予定です。今後の情報は「大学の自治の恢復を求める会」のFacebookページをご覧ください。

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