脱炭素化に向けてのエネルギー政策・気候変動対策の抜本的転換を求めます-各地域の住民・市民参加型の意志決定による無理のない再生可能エネルギー社会の構築を-

脱炭素化に向けてのエネルギー政策・気候変動対策の抜本的転換を求めます-各地域の住民・市民参加型の意志決定による無理のない再生可能エネルギー社会の構築を-

開始日
2021年8月4日
署名の宛先
内閣総理大臣
現在の賛同数:141次の目標:200
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この署名で変えたいこと

署名の発信者 特定非営利活動法人APEX

 今日、脱炭素社会の構築は、きわめて重要で緊急性の高い課題であり、世界が破滅的な事態に陥らないために、どうしても成し遂げなければならないものです。もう先延ばしは許されません。それは、未来に生きる人々に対する私たちの責務であるばかりか、もはや、今を生きる私たち自身の生存のためでもあります。日本でも、「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」ことが打ち出されましたが、そこにいたる道筋は必ずしも明らかでありません。

1.これまでの脱炭素化へ向けてのエネルギー政策・気候変動対策の問題点

 これまでの脱炭素化に向けてのエネルギー政策や気候変動対策の検討の多くは、現状の日本のエネルギー需給を前提・出発点とし、それに対して、今後の一定の経済成長や産業構造転換を見込む一方、できる限り省エネルギー対策を講じ、その上で必要とされるエネルギー消費を、従来型の化石燃料由来のエネルギーから、極力、再生可能エネルギーに置き換え、それではまかなえない分を、原子力や、CCS (二酸化炭素回収・貯留)付きの火力発電など、他の低炭素・脱炭素のエネルギーで調達していく、という考え方で行われています。しかし、そのような進め方では、下記のように、うまくいく確証がないばかりか、問題を別の次元にすりかえる心配があります。

〇現状の経済システムの下では、たとえ省エネ技術を導入しても、それでコストが削減されたり、生産効率が向上したり、商品価値が上がったりすると、生産・販売の拡大、新商品・サービスの開発・普及等につながってしまい、全体的なエネルギー削減が実現できるかどうかわかりません。
〇再生可能エネルギーも、あまり大規模・広範囲に導入すると、自然環境・居住環境の改変、一部の巨大企業による支配、持続的更新の困難、更新時の廃棄物発生等の問題をもたらす心配があります。
〇原発は、もはや経済的優位性も失っており、きわめて甚大な事故のリスク、超長期にわたる隔離・保管を要する放射性廃棄物の問題等を考えれば、それを使い続ける理由はありません。CCS、CCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)は、経済性、エネルギー収支、貯留の長期的安定性などの観点から、確実に使える保証のある技術ではなく、また、貴重な化石資源を消費してしまう点では現状と変わるところがありません。
〇そもそも、現状の膨大なエネルギー消費が、本当に人間社会の豊かさにつながっているものなのかが問われることがありません。

 そのようなことから、適正技術フォーラムならびに特定非営利活動法人APEXでは、今後のエネルギー供給についての考え方を抜本的に見直し、確実に脱炭素社会を実現するために、〈脱炭素社会構築のための適正な技術選択に関する提言〉を策定・発信しています。
 https://atfj.jp/datsutanso/
 提言は全部で8項目から成りますが、主な論点は以下のとおりです。大工場のあり方、都市のあり方、開発途上国に対する責務など、下記以外の論点につきましては提言本文をご覧下さい。

2.今後のエネルギー政策・気候変動対策に関する私たちの提言

(1)持続可能な形で供給できる資源の側から脱炭素社会を構想する
 18世紀の産業革命に端を発して爆発的に拡大・発展してきた近代産業社会は、化石燃料のエネルギーをふんだんに消費することを中核的な技術前提としてきました。ところが、化石燃料は、過去の数億年にもおよぶ悠久の自然の営みにより熟成されたものです。そのような資源を、たかだか数百年で消尽してしまうような、これまでの消費のあり方は著しく持続不可能であり、その消費量は膨大です。そのようなエネルギー消費を、問題を他に転嫁することなく、化石燃料以外のエネルギー源や省エネで代替し、それを持続的に維持できる保証はありません。私たちの生活や生産活動は、持続可能な形で供給できる資源の範囲で、自然環境と調和的に営まれる必要があります。化石燃料にもとづく肥大化したエネルギー消費を検討の出発点とするのではなく、発想を大きく転換して、持続可能な形で無理なく調達できるエネルギーの質と量や、同じく持続可能な形で調達できるさまざまな自然資源の側から、来たるべき社会と、そこにおける生活、産業、技術を構想すべきです。

(2)小規模分散型システムの重視
 今後の世界のエネルギー供給の主役となるべき再生可能エネルギーは、本質的に太陽エネルギーにもとづいており、希薄な密度であまねく広がっているため、小規模分散型のエネルギー供給システムになじみやすいものです。そのようなシステムとも連携しつつ、各地域で、エネルギー、水、食糧等の基本的なニーズの充足に関して自立性の高い、その一方で広域的交流・流通にも開かれた、小規模分散型の社会・経済・技術システムを構築することは、持続可能な社会の形成に大きく寄与します。そのような小規模分散型システムは、人々がコントロールしやすく、適正に雇用を生み出し、かつ人々がその能力や創造性を発揮できる技術を用いて、自然環境とも調和した、豊かで個性的な生産活動や生活を生み出しやすいものだからです。また、気候変動にもとづく自然災害や、はからずもその甚大な被害を経験するにいたったパンデミック、経済・金融危機等、多重的なリスクをかかえる世界にあって、生存のための基本的条件が、それぞれの地域の人々の制御の下に確保されていることは、社会の安定性を著しく高めます。今後の社会の構想は、小規模分散型システムを重視したものであるべきです。

(3)市民・住民参加による技術選択を
 これまでの技術開発や技術革新は、政府や大企業が主導し、一般市民は、単にそれに従い、受容する立場にとどまっていました。しかし、技術は本来、人々がより豊かに生き、幸福な社会を実現していくために開発され、それを人々が自ら選択して用いていくべきものです。上記の小規模分散型システムの重視とも整合的に、各地域において、当該地域住民が、その地域の持続可能なエネルギー供給、自立的で循環型の経済の構築に関して意見を交わし、その総意をもって、脱炭素型の持続可能な地域社会づくりの計画を策定し、実行していくべきです。元来、再生可能エネルギーの導入ポテンシャルは、前提条件の取り方により非常に大きな幅が生じるものであり、その前提条件の中には、地域住民がそれを受け入れるかどうかが、重要な条件として含まれます。たとえ再生可能エネルギーであっても、地元住民にとって受け入れがたい自然環境の改変や人文地理学的影響等をともなうものはさけるべきであり、また定期的更新を含め、長期的に維持できるものでなければなりません。それらは、専門家が提供する情報にもとづき、その地域の住民の判断に委ねられるべきものです。

(4)不確実な技術に依存しない。不合理な技術選択を避ける。
 現在の脱炭素社会に向けての検討の多くは、CCS、CCUS等の付加による化石燃料の利用に一定の期待を寄せるものになっています。しかし、これらの技術は、経済性、エネルギー収支、貯留の長期的安定性などの観点から、確実に使える保証のある技術ではなく、また、貴重な化石資源を消費してしまう点では現状と変わるところがありません。さまざまな技術開発に取り組むことは重要ですが、まだその有効性や実行可能性が確定していないにかかわらず、その成功を見越して、化石燃料消費からの脱却を遅らせるべきではありません。原子力は、安全対策や廃炉処理等のコストが嵩み、一方で再生可能エネルギーのコストが急速に低下していることから、経済的に見ても優位性を失いつつあります。まして、きわめて甚大な事故のリスク、十万年もの長期にわたる隔離・保管を要する放射性廃棄物の問題等を考えれば、脱炭素社会のエネルギー源として選択される合理性はありません。

以上をまとめますと、小規模分散型システムを重視しながら、地域の住民・市民が、導入可能で持続的に維持できると自ら判断する再生可能エネルギーの範囲で、生活と生産活動を営んでいくということになります(地域間で連携することも可能です)。それは、私たちの暮らしが貧しい禁欲的なものになることを意味しません。逆に、人間が本来もつ能力や創造性が存分に発揮され、コミュニティや家族の人間関係が豊かに醸成され、多様で広域的な交流・協力に開かれており、自然環境とも調和した、本当の意味で豊かな社会でありえます。

                                 以 上

 

適正技術フォーラム、特定非営利活動法人APEX

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