【報道機関へのお願い】 住宅地に入ったヒグマを追いかけないで!
【報道機関へのお願い】 住宅地に入ったヒグマを追いかけないで!
2021年6月18日、札幌市の住宅地にヒグマが出現し、4人の重軽傷者を出す事態となりました。
この事件で気になったのが、報道機関(マスコミ)の動きかたです。
報道機関が撮影した動画を見ると、完全に取材車でヒグマを追いかけているような格好になっています。車で追いかけられたら、ヒグマが慌てて動くのはごく当たり前のことです。
ヒグマを取材車で追いかけた結果、ヒグマは走り出し、通行量のある道路を横断、自転車に乗っている人に接触しかかったあと、自衛隊駐屯地の入り口まで行き、門にいた自衛隊員らしき人を倒したように私には見えます。
住宅地に入りこんで困惑しているヒグマ、さらに車で追いかけられればパニックにもなります。
今回、ヒグマが出現したのは住宅地です。パニックになって走るヒグマの先に、もしお散歩している保育園児がいたら、登下校中の小中学生がいたら、お散歩しているお年寄りがいたら、どうなるでしょうか?想像力を働かしていただければ、まずいことだというのはすぐにわかると思います。
住宅地に入りこんだヒグマを発見した場合、取るべき行動は車で追いかけることではありません。
状況によって異なりますが、このような状況で(報道機関が)取るべき行動は、
- ヒグマを刺激しないよう(走らせないように)、ヒグマに近づかないこと
- 周辺にいる人にヒグマがいることを伝えて、人が近づかないようにすること
- 警察に通報すること
ではないでしょうか。車で追いかけ回すようなことは、決してするべきではないと考えます。
もし仮に私がその場に居合わせた場合には、
- 玄関の扉が開きそうになったら、家から出ないよう声をかけます。
- 歩いている人や自転車に乗っている人がいれば、ここから離れるよう伝えます。
こうした状況下で最優先させるのは、何よりも人の安全(自分も含めて)です。
私は15年以上、知床でヒグマ対策の現場に携わってきました。
人とヒグマの軋轢を減らすこと、これが私の仕事です。
通常であれば、ヒグマは積極的に人を襲うような動物ではありません。しかしながらヒグマは、簡単に人を殺める力を持っている野生動物です。その扱いには専門的な知識と技術が必要です。
2019年8月、札幌市南区にヒグマが連日のように出現した際も報道各社は報道合戦を繰り広げ、取材方法(動きかた)が課題となりました。
ヒグマの射殺に加担した私……1週間の追跡取材で気付かされた現実(withnews)
取材の際は決してヒグマを追いかけないこと、これをまずお願いします。
最後に、今回の件で怪我をされた方の1日も早い回復を祈念しています。
*動画は私の所属団体が観光客向けに作成した動画です。ヒグマを発見しても、車から降りない、近づかない、餌をあげないは、どこでも共通です。