学問の自由を壊す「稼げる大学」法案(国際卓越研究大学法案)に反対します!

学問の自由を壊す「稼げる大学」法案(国際卓越研究大学法案)に反対します!

開始日
2022年4月12日
署名の宛先
岸田文雄殿 (内閣総理大臣)
現在の賛同数:18,278次の目標:25,000
声を届けよう

この署名で変えたいこと

 現在、国会では、研究力低下が懸念されている日本の大学を建て直す、という名目で、国際卓越研究大学法案の審議が進んでいます。政府が10兆円規模の資金(大学ファンド)を運用し、その運用益で国際卓越研究大学に選ばれた大学に対し、1校あたり年間数百億円の助成をするという内容です。

 これだけ聞けば、大学への助成金が増え、研究力を高める支援となる素晴らしい制度に思えるかもしれません。また、選ばれる数校にだけ関係のある話で、その他多くの大学の教職員や学生、一般市民には関係ないと思うかもしれません。

 しかしこの法案は、ごく一部の大学や研究分野のみを政治主導で優遇する結果、日本の研究力全体をかえって衰退させ、学問への政治の介入を加速し、憲法23条の学問の自由を破壊する、とても危険なものです。私たちは大学を横断して連帯し、この法案に反対するネットワークとして、オンライン署名を立ち上げました。

問題1:「稼げる」を大学や研究の評価基準とし、究極の「選択と集中」を行うことで、その被害は最終的に市民に向かう

 この法案は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)が打ち出してきた「稼げる大学」というコンセプトを具体化したものです。認定された大学は年3%程度の事業規模の成長を求められます。そのために授業料や、大学所有資産の貸し付けに関わる規制が緩和されます。つまり授業料が上がり、国際人権規約が求める高等教育無償化に逆行する事態が起きかねません。

 政治主導で「稼げる」かどうかが大学を評価するモノサシとなり、大規模な産学官連携が推奨されれば、国の政策方針や企業の利益に沿わない学問分野は淘汰されていくことでしょう。例えば企業が引き起こす公害問題、国家が引き起こす人権侵害問題に関わるような研究が萎縮してしまえば、その被害は全ての市民が被ることになります。

問題2:学問への政治介入により、憲法23条の学問の自由を破壊する

 この法案では、基本方針の策定や国際卓越研究大学の認定に際して、内閣総理大臣を議長とするCSTIの意見聴取を文部科学大臣に義務付けています。CSTIの構成員14名中6名は閣僚、7名は内閣総理大臣の指定した有識者です。大学への助成を審議する場において、ここまで大多数のメンバーが政府関係者で占められたことは、これまでありませんでした。

 2020年10月、菅政権による日本学術会議会員任命拒否は大きく問題視されましたが、この法案には、学問への政治介入が最初から組み込まれています。つまり、ときの政権が、憲法23条(学問の自由)が保障している専門研究者によるピア・レビューの原則を無視して、大学や学術のあり方に踏み込むことを制度化しているのです。

 このままでは、国内外の軍関係組織からの研究費の受給も、大学が「稼げる」ようになるならまったく差し支えないということになりかねません。

 わたしたちは考えます。

 この法案では、日本の研究力低下に歯止めはかかりません。2004年に国立大学が独立行政法人化して以降、各大学の運営の基盤となる運営費交付金が十数年間減らされ続け、その結果、多くの大学では、研究者を雇うカネがなく、特に若い研究者の安定した職(ポスト)の数が減りました。また、競争的研究資金は増えましたが、資金獲得のために、短期的に成果が見込める「稼げる」研究が優先されるようになりました。大学は疲弊しています

 研究は、裾野が広い場合、つまり、多くのさまざまな大学で自由闊達な研究が行なわれる場合にこそ、頂点が高くなります。ごく一部の大学だけを優遇するのは正しい方策とは言えません。2004年以降の日本の文教政策は、特に大学に対しては「選択と集中」という原理に基づいており、この考え方は今回の法案にも通じています。この「選択と集中」こそが、日本全体の大学の研究力を低下させてきた根本原因なのではないでしょうか。

 わたしたちは、この法案に反対し、慎重の上にも慎重な審議を求め、かつ、この機会に「選択と集中」の原理を抜本的に見直し、未来ある若者たちにとって望ましい高等教育体制を実現することを求めます

  どうぞ署名にご協力ください!

2022年4月12日

「稼げる大学」法案の廃案を求める大学横断ネットワーク
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【呼びかけ人】4月12日時点、あいうえお順

石原俊(明治学院大学教員)
指宿昭一(弁護士)
遠藤泰弘(松山大学教員)
河かおる(滋賀県立大学教員)
駒込武(京都大学教員)
戸田聡(北海道大学教員)
光本滋(北海道大学教員)
吉原ゆかり(筑波大学教員)
米田俊彦(お茶の水女子大学教員)

【呼びかけ団体】4月20日時点、あいうえお順

大分大学のガバナンスを考える市民の会、自由と平和のための京大有志の会大学の自治の恢復を求める会筑波大学の学長選考を考える会福岡教育大学の再生を願う教員の会

◆衆議院では可決してしまいましたが、参議院での審議が始まる連休明けまでに反対の声を高めれば、廃案に持ち込める可能性はまだあります。そこで、この問題を初めて知る方にもわかりやすくするために、タイトルと呼びかけ文を改訂しました(5月3日)。政府に対して求める内容については変更ありませんが、改訂に伴い賛同を取り消したい場合は、賛同時にChange.orgから自動で送られているメールから取り消しが可能です。詳しくはこちらをご覧下さい。改訂前の内容は、こちらにあります。

◆さらに詳細に法案の内容に立ち入った声明への賛同呼びかけはこちらで行っています。今後の連携のためにこちらにもご賛同いただけますと幸いです。

◆賛同後にカンパに関するメッセージが出てくることがありますが、これはChange.orgへのカンパで、キャンペーンの拡散に使われますが、わたしたちに直接届くものではありません。もし私たちへのカンパをしてくださる方には口座番号をご連絡しますので事務局(trans.university.network@gmail.com)までご連絡ください。

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意思決定者(宛先)

  • 岸田文雄殿 内閣総理大臣
  • 鈴木俊一殿 財務大臣
  • 末松信介殿 文部科学大臣