持ち帰り残業を労働時間として認め、 エンジニアの精神疾患を労災認定してほしい

持ち帰り残業を労働時間として認め、 エンジニアの精神疾患を労災認定してほしい

開始日
2022年11月19日
現在の賛同数:819次の目標:1,000
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この署名で変えたいこと

 半導体検査装置メーカーのエンジニアとして働いていたAさん(30代Aさん)は、光超音波顕微鏡の開発委託に従事していました。2017年秋頃から長時間労働がひどくなり、Aさんは月に200時間に及ぶ持ち帰り残業を行っていました。持ち帰り残業になったのは会社では毎月9時間以上の残業を厳しく制限していたからです。長時間の持ち帰り残業とパワーハラスメントなどが原因で、Aさんは2018年1月に精神疾患を発症し、10か月間の休職を余儀なくされてしまいました。

 2018年5月、Aさんは精神疾患は労災であるとして行田労働基準監督署に労災申請をおこないましたが、労災は不認定となりました。

 Aさんの持ち帰り残業は労災認定基準を優に超えるほどに長いものでしたが、行田労働基準監督署は、その持ち帰りの業務時間に関して労働時間と一切を認定しなかったのです。Aさんは監督署の判断は不服として、審査請求、再審査請求を行いましたが、労基署の決定は覆りませんでした。

 長時間労働は大きな心理的ストレスをもたらすものであり、精神疾患の労災認定基準でも最も重要視される要素の一つです。ところが、持ち帰り残業について国は、極めて厳しい基準で判断しており、会社が労働者に明確な形で自宅に持ち帰って労働するよう指示していたり、自宅でやっていた労働の成果物がなかったりする場合には、心理的ストレスのある労働時間として認定しないのです。Aさんの場合は、持ち帰りで作った膨大な業務資料がありましたが、業務指示が明確でないことが主な理由で持ち帰り時間が労働時間として認められませんでした。

 持ち帰り残業の多くは、会社で残業することを禁止された労働者が何とか業務をこなそうとして発生します。自ら望んで持ち帰りをする人はすくないでしょう。ましてや精神疾患を発症するような膨大な量の持ち帰りなら尚更です。持ち帰り残業の時間も労働者が心理的ストレスを与えていることは間違いありません。

 そこでAさんは、2022年11月、国を相手に労災認定をするよう求める裁判を提起する予定です。メインの主張は持ち帰り残業時間を労働時間として認めてほしいということです。

 この裁判は、長時間労働が規制される中で持ち帰り残業をしている人やコロナ感染拡大以降に定着しつつあるリモートワーク業務に従事しているすべての人に大きな影響を与えるものです。

 国はこうした事情を踏まえ、精神疾患の労災認定において持ち帰り残業の労働時間を心理的ストレスを与える労働時間として積極的に評価すべきです。

 そこで、私たちは下記の点を裁判所と厚生労働省に求める署名を集めることにしました。

 ぜひ、多くの方にこの事件について知っていただくとともに、今後社会的にリモートワークによる労働災害を無くし、万が一労働災害が発生した場合は労災認定がなされるよう、署名へご協力をお願い致します。署名は、裁判所はもちろん、厚労省など国へも提出を予定しています。

 みなさまのご協力をよろしくお願いいたします。

 

<要請事項>

・持ち帰り残業時間を労働時間として認定し、Aさんの精神疾患を労災として認定してください。

・精神疾患および脳・心臓疾患の労災認定基準における持ち帰り残業の基準を変更し、持ち帰り残業を心理的負荷の要素として積極的に評価されるようにしてください。

<署名提出先>東京地方裁判所、厚生労働省大臣

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【経過】

2014年7月  Aさん、光超音波顕微鏡の開発チームに赴任する

2017年8月~2018年1月 開発スケジュールが遅れたことなどが原因となって、持ち帰りによる長時間労働がひどくなる。2017年9月の持ち帰り残業時間がおよそ200時間に及んだ。

2018年1月 適応障害と診断を受ける

2018年5月 行田労基署に労災を申請

2019年4月 審査請求を埼玉労働局に申し立てる。

2021年8月 審査請求の却下決定が下され、即日再審査請求を申し立てる。

2021年9月 再審査請求を審査していた審査会が、労災の不認定を決定。

2022年11月 国を相手に労災認定を求めて東京地裁に提訴予定

 

◆事件概要

 Aさんが勤務する株式会社アドバンテストは、2016年10月に革新的研究開発推進プログラムImPACTから光超音波顕微鏡システムの開発委託を受け、2019年3月までに医療・美容健康領域での実用化の見通しを得ていることを目標に設定されていました(https://www.jst.go.jp/impact/program/10.html)。

 このプロジェクトにアドバンテストは5名のチームで対応しました。Aさんはプロジェクトチームの中で、プロジェクトリーダー(管理職)に次ぐ、サブリーダーの立場でした。

【難航する開発業務】

  Aさんのいたプロジェクトチームは、システムに欠かせない3種類の部品を開発し、それを組み合わせることで製品の完成を目指しました。予定では3つの部品を2017年9月までに完成させて、2018年4月頃までに製品の試作品が完成する予定でした。

 しかし開発は難航し予定より大幅に遅れることになりました。Aさんはプロジェクトリーダー(管理職)に業務スケジュールの延期と自身の業務量の低減を申し入れましたが、受け入れられませんでした。Aさんは無理な仕事量を終えなければなりませんでしたが、会社の残業規制は9時間までと非常に厳しく、会社で業務を終えることが不可能でした。そこでAさんは膨大な量の持ち帰り残業をせざるを得なくなり、ひと月の持ち帰り残業が200時間以上にも及びました。

 【経費削減を目的とした名ばかりの9時間残業制限】

  会社の残業規制は非常に厳しいものでした。残業時間が9時間を超えると、上司や本人も懲戒の対象になるとメールで知らされていました(実際に懲戒になっていた人がいたかは不明)。残業規制を厳しくしながら、その範囲内で終わるよう業務量が調整されたかというとそうではありませんでした。Aさんは何度もプロジェクトリーダーに業務の期限を延ばしたり、業務量を減らしたりするよう求めましたが、聞き入れてもらえませんでした。業務の調整が行われない理由は、スケジュールが少しでも遅れると製品開発から外されてしまい、予算を確保できないからと説明を受けました。

 こういう状態ですので、持ち帰りはAさんだけではありませんでした。なんとプロジェクトチーム5名の内4名が恒常的に業務を自宅に持ち帰って行っていたのです。

【持ち帰りで深夜・休日に上司とやり取りしたメールは月に78件に及ぶ】

 Aさんやチームメンバーは業務を自宅に持ち帰ったあと、プロジェクトリーダー(管理職)と業務メールを頻繁にやり取りしていました。Aさんに至っては最も多忙であった2017年9月は一か月の間に78件も自宅から深夜・休日などにプロジェクトリーダーとメールのやり取りを行っています。 

【持ち帰り仕事に要する時間は精神的ストレスを伴う労働時間である】

 裁判ではアルゴグラフィックス事件(東京地裁 令2.3.25判決)のように、PCログオン時間、メールの送信時間を証拠に、持ち帰りで行った業務が心理的負荷を伴う労働時間として認められたケースがあります。Aさんはこのケースに従ってPCログオン時間、成果物の更新履歴、メールの送信履歴を提出しましたが、労基署は精神負荷のかかる労働時間として、1分たりとも労働時間として認めませんでした。

 なぜ認められないのでしょうか。背景には厚生労働省が持ち帰り残業で厳しい基準を取るように全国の労働基準監督署に通達したことが影響しているように思います。

仮眠や持ち帰り残業が「労働時間」に加算されない? 厚労省が基準厳格化、労災の認定後退の恐れ:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

 

◆原告コメント

労災保険は、労働災害が起きたときの保険であり被災者救済が前提であるため、可能な限り救済する方針で調査を進めて頂きたいと思います。今回私は、持ち帰り業務は無条件で労働とは認めないという労基署の強い意志を感じました。なぜならば、労働時間を算出するために提出した証拠には触れられず、バッサリと切り捨てられているからです。

 労基署は、背景となるこれらの事実を正確に捉えるべきです。
1.プロジェクトチームの5名中4名が持ち帰り残業を行うほど業務がひっ迫していたこと。
2.持ち帰りで行われた業務の報告(e-mail)に対して、上司が業務を肯定的に返信をしていること。
3.持ち帰りで行われた業務報告に、上司が持ち帰りをやめるように指示してないこと。
4.業務量多寡のため、増員を計画したが会社が却下したこと。
5.上司と課員の間で深夜・休日に多数のメールが送受信されていること。
6.通勤電車の中でまで会社のPCを開いて業務を行っている形跡があること。
7.スケジュールの延期を申し入れて却下されていること。
8.上司に泣きながら業務を減らして欲しいと訴えていること。
9.業務の多忙さを理由にした体調不良を訴え循環器内科を受診し、医師が業務の多さに言及していること。

1つ1つに証拠があり、この事実を鑑みれば、労働者の精神的負担がいかに強いものであったのか、容易に想像がつくはずです。不支給に都合の良い一部の状況のみ並び立てて論理構成をするのではなく、救済を前提に事件全体を背景から見てほしいです。

 労働基準監督署は厚生労働省が定める認定基準にしたがって、労働災害の認否を行います。持ち帰り業務であったとしても、持帰らざるを得ない労働環境や、実際に労働を行っている証拠が存在する場合には、被害者救済の観点から、積極的に被害者にヒアリングを行い労災認定するように基準を変えて欲しいです。

 

◆過労死・労災関連の相談や支援ボランティアへの参加は以下の連絡先まで

 日本では国が認めるだけでも毎年200人近い方が、過労死や過労自死、ハラスメント自死など、職場の労働環境が原因で命を落としています。しかし、その背後には、過労死だと思ってもどうすればいいかわからずにアクションを取れないご遺族や、労災申請したくても会社から申請を妨害されたり、証拠を集められずに困っている労災被害当事者の方が何千人、何万人もいると言われています。

 過労死や職場での怪我や精神疾患をはじめとする病気になった場合、ご遺族やご本人が国に対して労働災害を申請してはじめて国が調査を行い、病気などが労災に当たるのかを判断します。

 そのためには証拠集めなどが必要になりますが、お一人やご家族だけで行うのは時間的にも精神的にも負担が大きいかと思います。裁判や労災申請と聞いてもあまりイメージができなかったり、そこまでやりたくないとお考えかもしれませんが、「過労死かもしれない」、「これは労災なのでは?」と思った際には、どういった解決策がありうるのかを確かめるだけでも結構ですので、POSSEの無料相談窓口にご連絡ください。相談料はかかりません。秘密厳守でご相談に対応いたします。

 また、「過労死を無くしたい、仕事が原因で命が失われる社会を変えたい」という学生や若手社会人の方は、ぜひボランティアを募集していますので、私たちまでご連絡ください。一緒に今の社会を変えていきましょう。

NPO法人POSSE

過労死相談ページ:https://www.npoposse.jp/karoshi-workplaceinjuries

ボランティア募集ページ:https://www.npoposse.jp/volunteer

相談電話:

03-6699-9359(相談は、平日17:00-21:00 / 日祝13:00-17:00 水曜・土曜定休)

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相談メール:soudan@npoposse.jp

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