香害は、化学物質が引き起こす健康被害です。2023年5月、シャボン玉石けん株式会社が行ったアンケートでは「人工的な香料に40%が体調不良を経験」との結果が出ています。
https://www.nikkei.com/article/DGXZRSP656467_S3A600C2000000/
実際には、どういう健康被害が起きて、生活にはどういう影響が出ているのでしょうか?
2020年春、「香害をなくす連絡会」が行ったアンケートでは、香害被害者の約2割もの人が休職や退職、欠席や休学に追い込まれている深刻な実態が明らかになりました。「教室に入れず学校に行けない」「職場の理解を得られず職を失った」など被害者の声(1048人分)が日本消費者連盟のホームページで公開されています。
https://nishoren.net/new-information/13997
被害の声は、花王、ライオン、P&Gジャパンに送付されましたが、反応はありませんでした。
https://nishoren.net/new-information/13650
また、「カナリア・ネットワーク全国」も、香害被害者である会員からの投稿を「カナリアたちの声」としてホームページに掲載しています。被害の「きっかけ」・「症状・困りごと」・「望むこと」が項目立てられ読みやすくなっています。(約100名)
https://canary-network.org/category/members-voice/
香害被害の声の高まりを受けて結成された、「香害をなくす議員の会」の取組みもあり、最近は、公的機関が香害被害の実態調査を始めています。
宝塚市教育委員会は「市立小学校・中学校における香害及び化学物質過敏症に関するアンケート」を2023年春に行い、結果をホームページ上で公開しています。
https://www.city.takarazuka.hyogo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/047/349/kougai0928.pdf
アンケート調査によって、一定数の体調不良者の存在と家族への影響が明らかになり、宝塚市教育委員会は保護者に向けて、柔軟剤使用の注意や給食着の個人持ちを認めるほか、来校時の香料製品への配慮を呼びかける通知を出すに至っています。
こうした調査によって被害の声が掬い上げられて、行政の対応につながっていくのです。
最後に、具体的な被害者の声をお伝えしておきます。
2023年2月13日、日本弁護士連合会主催のシンポジウム「香害問題を考える」では、大人と子ども、それぞれの香害による被害実態の報告が行われ、「カナリア・ネットワーク全国」の会員の一人が、子どもの被害報告を担当しました。
https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/activity/human/enviroment/news_77.pdf
(6ページ参照)
「保育園では香害によって皮膚の炎症が酷くなり、一年ほど通園できなくなりました。体の辛さで眠れない日が続き、住宅地や公園などでも香りが充満していることから外出もできなくなって、「みんなと遊びたい」と窓の外をみて泣いていました。
一番悪い状態よりも回復したことと、換気の強化などで少し登園できるようになりましたが、どんなに換気をしても、付着した香りが子どもの服や肌を洗ってもなかなか落ちなくて、接触している時間も長くなるためか炎症を数日引きずります。洗濯の目安の使用量を守っていても、香りが残り続ける、広がる、付着するという商品だったら、消費者同士で配慮するのは難しいです。室内に洗剤や柔軟剤の成分が溢れかえってしまいます。
小学校では「一人は嫌だ。みんなと同じ教室がいい」と子どもが望んでいるのに、別室登校は、個別配慮ではなく、隔離だと感じています。
香害によって、教育においても子ども同士の交流も含めて、大きな制限や偏見を受けています。そのような中で、子どもは「みんなと一緒にいたいから」と無理をし続けています。「やめて」「苦しい」と言っても、原因の化学物質を減らして対策するのではなく、苦しんでいる人が我慢するか、出ていけばいいという状況が続くことは、心身の発達にも影響を及ぼすのではないでしょうか。」
(会員の方の承諾を得て当日の報告内容を一部要約)
以上は、香害被害の一部をご紹介したに過ぎません。それでも、子どもの教育権は奪われ、人権侵害の状態に置かれている被害者たちの様子がお分かりいただけるかと思います。
被害者一人一人は、それぞれの事情を抱え、困難な毎日を送っています。
皆様にはそうした実態にご理解と思いを寄せていただき、香害という公害をなくしていくためにご支援くださいますよう、よろしくお願い致します。