なかったことにされる性暴力。警察に行けなくても被害の証拠を残せる仕組みを全国に!
なかったことにされる性暴力。警察に行けなくても被害の証拠を残せる仕組みを全国に!
性暴力。証拠が残せるうちに警察に行くのは負担が大きすぎる
性暴力に遭った。とても怖くて警察にはまだ行く勇気がない。でも、なかったことにしたくない。一縷の望みをかけて「証拠だけでも残しておくことはできませんか?」と希望したとき、
「警察に行かないと証拠は取れません」
そう言われたことで、証拠を残せずに加害者の立件に繋がらなかった。時間が経って被害を申告しても被害を認めてもらえなかった。
そのような事態を少しでも減らすため、被害者には証拠保全に関する情報やそれを負担少なくできる仕組みが必要です。
性暴力には非常に暗数が多く、警察に被害を申告できる人は約5.6%と言われています。性暴力の加害者を立件するためには、証拠が必要となりますが、被害直後に警察にまで行ける被害者はごく一部です。
「まだ警察にまでは行く勇気がないけれど、時間が経った後でなら訴えられるかもしれない」そう思ったときに、病院で証拠だけでも残しておけると、その先の司法手続きの結果も、受けられる支援も大きく変わります。
悲しいことに、被害から少し時間が経って警察に行く決断ができても、証拠を残せなかったために不起訴とされたり、犯人を立件できなかったり、被害届さえ認められないケースが見られます。しかし、それは被害者が悪いわけでは決してありません。被害申告をしにくくさせていたり、証拠保全が難しい仕組みを放置したりしてきた社会の課題です。少しでもそのような事態を減らすために、私たちは、各自治体と医療機関・警察が連携し、被害者の負担なく証拠保全ができる環境を、全国に作ることを求めます。
同じ被害を受けたのに。支援があまりに不平等
不起訴とされたり、警察で立件できなかったりすることは「公的な支援から弾かれてしまう」ことも意味します。中には警察へ申告をしなくても治療費が公費から出る自治体もありますが、そういった支援にも地域ごとに差があります。
同じ被害を受けていても、証拠がないことで本来公費から出るはずの治療費やアフターピル代が自費となってしまいます。そして、証拠保全ができないことで起こるこのような支援の不平等やリスクについて、世の中ではほとんど知られていません。
性暴力にあった人が相談しやすい環境を整え、証拠を残すかどうか本人の意思を第一にすることを大前提としたうえで、「被害に遭った人に支援情報が開かれている状態を作ること」が必要だと考えます。
現在、「警察に通報ができなくても証拠保全ができる」取り組みは、約半数の自治体や医療機関でしか行われていません。(1)
※(1)THYMEが行った全国のワンストップセンターへのアンケート調査では、回答があった27の自治体のうち9の自治体で「警察への申告がないと証拠保全はできない」という回答でした
同じ状況や同じ被害に遭ったのに、住んでいる地域の制度の違いで、その後が変わってしまう不平等が起きています。
署名発起人で、性暴力被害当事者であるTHYME代表の卜田は、希望したにも関わらず、最初に受診した地域の医療機関で証拠保全をすることができず、結果的に遅れが出てしまいました。
多大な恐怖の中で警察に申告をし、証拠が消えてしまうギリギリで残すことができましたが、もう少し遅ければ私の被害も「暗数」になっていたかもしれません。地域を移動する必要もあり、被害者にとってはかなりの負担でした。被害直後にこのような負担を越えなければ被害が認められなくなってしまう状況は、証拠保全体制をととのえることで少しでも改善することができると思います。
性犯罪の暗数を減らすため、起きている被害をしっかり受け止めるためにも、「警察に申告できなくても病院でスムーズに証拠保全をできる仕組み」を全国で作ってください。
政府から各自治体にこの問題を通達し、管轄の警察、地域の医療機関、ワンストップセンターの連携強化を求めます。
各機関への要望
〇自治体に対して
- ワンストップセンターと医療機関が相互に連携している状態を作るために、産婦人科医療機関での啓発パンフレットの配布やポスター掲示を求めます。
- 性暴力被害の急性期相談があった場合、証拠保全の流れや証拠保全しないことでのリスクについて被害者に必ず説明をするよう、地域のワンストップセンターへ改めて周知することを求めます。
〇医療機関に対して
- 性暴力被害の申告やそうと疑われる患者が来院した際には、証拠保全について必ず被害者に説明をすることを求めます。そのうえでワンストップセンターを紹介・連携することを求めます。
- アフターピルの処方や性感染症検査以外にも、被害者が希望した場合に、警察を通さなくても証拠保全することを求めます。キットがないなど証拠保全が不可能な場合は、被害者に適切な説明をし、ワンストップセンターを通して証拠保全が可能なほかの病院を紹介することを求めます。(2)
- DNA採取以外にも、レイプドラッグが使用された疑いがある場合は採血や尿検査も必要です。ヒアリングをし、そのような証拠保全の対応をすることを求めます。
※(2)警察を通さずに証拠保全をできる医療機関について、ほとんど公開はしていませんでしたが、警察への申告に関わらず証拠保全ができる地域では、ワンストップセンターに連絡をすることで証拠保全可能な病院を紹介してくれる仕組みになっています(THYME調べ)
〇警察に対して
- 性暴力被害に遭った人が来所して被害を訴えた場合、早急に病院での証拠保全が済んでいるかどうかヒアリングし、事情聴取よりも優先して証拠保全を行うことを求めます。
- 警察に申告がされずに病院で証拠保全された資料を、捜査資料として認め、適切に扱うことを求めます。
- 管轄のワンストップセンターの活動に理解を示し、被害者聴取の際に支援員の同席を認めたり、病院や現場検証への同行を認めたりと、被害者の精神的負担を軽減するための連携をすることを求めます。
署名は、【9/16】に内閣府男女共同参画担当大臣、厚生労働省宛に提出予定です。
上記の問題は、行政が課題を認知ししっかり対応することで、変えていくことのできる問題です。「なかったことにされる性暴力」「公的支援から弾かれてしまう被害者」を少しでも減らすために、どうかみなさまのお力をお貸しください。
よろしくお願いいたします。
THYME
卜田素代香 松本あすみ
https://thyme.buzz/