全国の都道府県に対し、捕獲した熊を殺さなくても良い「放獣体制の強化、森の復元」を求めます。
全国の都道府県に対し、捕獲した熊を殺さなくても良い「放獣体制の強化、森の復元」を求めます。
2023年10月14日に、秋田県美郷町で発生した親子グマ3頭の殺処分を受け、秋田県及び、捕殺数が多いが放獣がほとんど無い岩手県、京都府をはじめとする都道府県に対し、捕獲した熊の放獣体制の強化、森の復元を求めます。
近年、熊が頻繁に人里に出てきては、人間によって、捕殺されています。
明治まで、豊かな山に囲まれた日本では、山には熊をはじめとする多くの野生動物がいましたが、実際にクマを見ることは、ほとんどなかったと言われています。かつての日本人は山を神聖な場所として立ち入りを禁止していました。特に標高800メートルより上は「入らずの山」として守ってきました。
そのおかげで、先進国では唯一、
首都にクマが残る奇跡の国として、存続しているのがこの日本です。
しかし、近年の各都道府県のツキノワグマの捕殺件数を見ていると、かつての「自然界と完全調和していた日本人」はどこへ行ったのかと大変な危機感を感じます。
クマは捕獲圧に弱い生き物で、世界的に見ても絶滅の傾向にある生き物です。九州ではクマは絶滅し、四国では残り16頭。絶滅危惧個体群も各地にあります。
しかしながら、秋田県では、今年1500頭までのツキノワグマの処分をして良いと言う条例を出しています。この捕殺数の許可数の根拠、2017年のツキノワグマの個体数は1000頭ほどであったのが、僅か6年で4400頭に膨れ上がっています。特に生息地の環境改善が行われたわけではないのに、3倍以上にあることは考えにくいです。この信憑性が疑わしい個体数調査に基づいていて「個体数管理」を行おうとしていることも、大変問題だと思います。
●秋田県以外のクマ対策について
滋賀県は例年、年間捕殺数はゼロに近く、昨年は2頭捕獲していますが2頭とも捕殺していません。しかし隣県の京都府は昨年113頭のツキノワグマを捕殺しています。東北と同様に自然豊かな長野県では、積極的な放獣に取り組まれています。兵庫県の一部の地方では、熊との共存の為に多くの取り組みを成功させておられます。こちらの資料にもありますが多くの個体が生息地に回帰しています。
<参照資料>クマの学習放獸と回帰率の調査事例 福井県自然保護課「ツキノワグマの捕護に関する取り扱い指針」
https://www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs5-4a/pdfs/chpt2-app.pdf
なぜ、都道府県によってこんなにも差が出るのでしょうか?
本当に「殺処分」以外の選択肢はなかったのでしょうか?
どうか各都道府県の最終決定権を持つ知事の皆様にお願いです。
殺さなくても良い、命を救える体制を強化してください。
その為に「森林環境税」を使って下さい。
例えば、山の保全と熊と人の共生対策の為の専門家の配置などに当てて下さい。
●ツキノワグマ
ツキノワグマの保護は
「かわいそうだから」
などという問題ではありません。
彼らがいなくなれば、
確実に100年ほどで日本の山は命の循環を止め、死んでいきます。
それが何を意味するかお分かりですよね。
私たちは「水源を失う」
ということです。
ツキノワグマはドングリなどの植物を主食として200種類の食べ物を食べながらおよそ200キロの範囲を移動します。森の中でで未消化の種が糞と共に落ちます。クマたちは木に登り どんぐりを食べるため、枝をパキパキと折ります。すると、そこから日光や風が入り、光が当たった地表には,新しい命が芽吹きます。熊たちが,爪で木はだを剥けば,そこがウロとなり、ミツバチなどが利用します。ミツバチが花粉を運び、花を咲かせ鳥や昆虫がやってきます。その昆虫たちを食べに小動物や小鳥たちがやってきます。
この「偉大な命の循環の最も大きな功労者は熊だ」ということです。
私達人間の「生活」も「産業」も「文明」もこのクマたちが支える豊かな水の森に支えられているのです。
かつての日本を知っている人たちは、そろえたように川の水量の低下を訴えます。
ツキノワグマは森が健全であることのバロメーターです。今、北海道、東北の山々からクマがたくさん降りてきているということは、多様性のある森が失われていると言うことです。さらに、近年では「再生可能エネルギー」という名のもとに、開発が進められています。
何十haもの山が、メガソーラーや風力発電のために切り開かれているのです。森は温暖化対策のためにも必要だと言われているにもかかわらず、ピカピカのメガソーラーや巨大風車で埋めつくされようとしています。
当然ですが、それらはクマをはじめ、すべての野生動物の生息域(家)を壊し、
さらに食べ物を奪っています。
ツキノワグマの殺処分は何も解決をしていません。
必要なのは彼らを存続させるための森の復元です。
戦後の「杉桧の拡大造林」をもう一度「天然林」に戻すことです。
しかし、それには時間とお金がかかります。
このままだと森が健全になる前にツキノワグマは絶滅するでしょう。
そうならないために、野生の熊を安易に殺してしまうのではなく
「放獣体制を強化」をどうかお願いします。
その為の一つとして、
各自治体の「鳥獣対策員」や「専門家」の方々で数ヶ月に一度zoomなどを使って、兵庫県や滋賀県のように「成功例」を持っている方々から情報を得る「全国鳥獣対策連絡会」(勉強会や相談会)などを行ってみることも、非常に有益ではないかと、僭越ながらご提案申し上げます。
ご協力いただける専門員さんはきっとたくさんいると思います。
「首都にクマが残る奇跡の国の日本」の国民として切に,お願いいたします。
クマと日本の未来を考える会