「いじめ防止対策推進法」を改正してください! ―いじめ自殺を「突然死」で公表しようとしても許される法律に罰則を―

「いじめ防止対策推進法」を改正してください! ―いじめ自殺を「突然死」で公表しようとしても許される法律に罰則を―

開始日
2023年12月13日
現在の賛同数:29,011次の目標:35,000
今週は138人が賛同しました

この署名で変えたいこと

私たちは、2017年に子どもをいじめによる自死で亡くした両親です。

息子は当時、長崎市内の私立「海星学園」に通う高校2年生(16歳)でした。新学期が始まって間もない4月20日、自宅近所の公園で自ら命を絶ちました。息子が残したノートには、同級生たちからの日常的ないじめや教員からの理不尽な指導の事実が綴られていました。私たちは、息子が亡くなった理由の究明と再発防止のために、悲しみを堪えて立ちあがろうと決めました。

ところが海星高校も、私立校を管轄する長崎県も、再発防止に努めるどころか「いじめ防止対策推進法」を守らず、「壁」となって私たちの前に立ちはだかりました。

例えば海星高校は息子の自殺の公表を拒み、「突然死」や「転校」として発表することを私たちに提案しました。

私たちが驚いたのは、当初いじめの事実を認めていた海星高校が主張を変え、いじめを認めなくなったことです。息子の遺書については、生徒・保護者への説明会で教頭が「検証が必要だ」と主張しました。第三者委員会が出した「いじめが自死の主たる要因」という調査結果も否定し、現在に至っています。

長崎県は、私たち遺族の訴えを聞いてもなお、海星高校の側につきました。海星高校が長崎県に「対外的には突然死として説明する」と提案したのに対して、「突然死まではギリ許せる」と容認したのです。

「このままでは、息子と同じ目に遭う子どもが出てしまう」と感じた私たちは、自分たちで原因究明と再発防止のために動くことを決めました。

目指しているのは、「いじめ防止対策推進法」の改正です。いじめの撲滅よりも、組織や自分の立場を守ろうとする人たちが学校や教育行政にいる限り、法を遵守しなくても何ら責任を問われない現行法を変え、罰則規定を設けるべきです。実際、罰則に閉校措置がある国もあります。

それくらいしなければ、子どもをいじめから守り、子どもの命を守ることができないというのが、私たちの実感です。

 

息子が通っていた私立海星学園(引用:Tansa記事)

 

息子が通っていた私立海星学園(引用:Tansa記事)

 

●学校と行政の法律違反の数々

いじめ防止対策推進法ができたのは、2013年です。きっかけは、2011年に起きた「大津市中2いじめ自殺事件」でした。この事件では、いじめによって自殺した生徒の学校や教育委員会が、いじめの隠蔽を図り、自分たちの責任から逃れようとしました。これを受け、学校、自治体、国がすべき対応と責任が盛り込まれた法律が制定されました。

しかし法律ができても、学校や行政は責任逃れに終始して再発防止に向き合いません。息子のケースでは、数々の法律違反の疑いが見受けられました。

①いじめの防止と早期発見に取り組んでいなかった

  • 第8条 学校及び学校の教職員の責務
    学校及び学校の教職員は、基本理念にのっとり、当該学校に在籍する児童等の保護者、地域住民、児童相談所その他の関係者との連携を図りつつ、学校全体でいじめの防止及び早期発見に取り組むとともに、当該学校に在籍する児童等がいじめを受けていると思われるときは、適切かつ迅速にこれに対処する責務を有する。

教職員は、息子が自死するまで、「いじめを認識していない」との回答ばかりでした。また、「この学校にはいじめはない」と断言する教員がほとんどでした。いじめの詳細が明らかになったのは、息子の自死から3カ月後、弁護士や臨床心理士、他校の元校長ら5人からなる第三者調査委員会が発足した後です。1年半におよぶ調査を実施し、複数の生徒が、息子へのいじめが日常的に行われていたことを証言しました。

②加害生徒を知らない担任と学年主任、いじめを否定する遺族不在の保護者説明会

  • 第15条2 学校におけるいじめの防止
    学校の設置者及びその設置する学校は、当該学校におけるいじめを防止するため、当該学校に在籍する児童等の保護者、地域住民その他の関係者との連携を図りつつ、いじめの防止に資する活動であって当該学校に在籍する児童等が自主的に行うものに対する支援、当該学校に在籍する児童等及びその保護者並びに当該学校の教職員に対するいじめを防止することの重要性に関する理解を深めるための啓発その他必要な措置を講ずるものとする。

海星高校は、保護者や教職員に対していじめを防止するために必要な措置をとっていません。それどころか、遺族が参加していない保護者説明会でいじめの事実を否定しました。教職員に対しては、基本的な情報すら共有していませんでした。たとえば、息子の自死から1年経っても、担任と学年主任は加害生徒を把握していなかったのです。海星高校は幹部のみで情報を共有して現場の教員には伝えず、また現場の教員も自ら幹部に確認することはありませんでした。

③相談体制を整備していなかった

  • 第16条3 いじめの早期発見のための措置
    学校の設置者及びその設置する学校は、当該学校に在籍する児童等及びその保護者並びに当該学校の教職員がいじめに係る相談を行うことができる体制(次項において「相談体制」という。)を整備するものとする。

息子が亡くなるまで、海星高校は生徒や保護者、教職員がいじめについて相談できる体制を整備していませんでした。

④第三者委員会の調査結果を認めない

  • 第28条 学校の設置者又はその設置する学校による対処
    学校の設置者又はその設置する学校は、次に掲げる場合には、その事態(以下「重大事態」という。)に対処し、及び当該重大事態と同種の事態の発生の防止に資するため、速やかに、当該学校の設置者又はその設置する学校の下に組織を設け、質問票の使用その他の適切な方法により当該重大事態に係る事実関係を明確にするための調査を行うものとする。

海星高校は、遺族が要望書を出したことでようやく第三者委員会を設置しました。第三者委員会は1年半に及ぶ調査を経て、「いじめが自死の主たる要因」という調査結果を出しました。ところが海星高校自身が依頼して発足した第三者委員会の調査結果を、海星高校は否定したまま現在に至っています。

⑤調査結果を隠蔽&虚偽の報告

  • 第28条2 学校の設置者又はその設置する学校による対処
    学校の設置者又はその設置する学校は、前項の規定による調査を行ったときは、当該調査に係るいじめを受けた児童等及びその保護者に対し、当該調査に係る重大事態の事実関係等その他の必要な情報を適切に提供するものとする。

本条文に基づいた調査を実りあるものにするためには、学校側に不都合なことがあったとしても、事実に向き合おうとする姿勢が重要です。学校側は、附属機関等に積極的に資料を提供するとともに、調査結果を重んじ、主体的に再発防止に取り組まなければなりません。ところが海星高校は、遺族に対して説明を一切行いませんでした。

また海星高校は、遺族に対して虚偽の報告を行いました。海星高校は第三者委員会の調査以前に、生徒を対象としたアンケート調査を実施していました。調査では、複数の生徒が息子へのいじめの事実を回答していました。しかし海星高校は、遺族に対して「何も出てこなかった」と報告しました。

第三者委員会による調査でも、息子へのいじめが認められ、「いじめが自死の主たる原因」だと結論づけられました。ところが学校側は報告書の内容を受け入れず、その旨を遺族側にFAXで伝えました。

⑥知事の傍観

  • 第31条3 私立の学校に係る対処
    都道府県知事は、前項の規定による調査の結果を踏まえ、当該調査に係る学校法人又はその設置する学校が当該調査に係る重大事態への対処又は当該重大事態と同種の事態の発生の防止のために必要な措置を講ずることができるよう、私立学校法第六条に規定する権限の適切な行使その他の必要な措置を講ずるものとする。

長崎県の中村法道知事(当時)は、第三者委員会が出した「いじめが自死の主たる要因」という調査結果を海星高校が否定した後も、一切措置をとりませんでした。

⑦いじめの隠蔽

  • 第34条 学校評価における留意事項
    学校の評価を行う場合においていじめの防止等のための対策を取り扱うに当たっては、いじめの事実が隠蔽されず、並びにいじめの実態の把握及びいじめに対する措置が適切に行われるよう、いじめの早期発見、いじめの再発を防止するための取組等について適正に評価が行われるようにしなければならない。

海星高校は、いじめの隠蔽を図りました。長崎県は、それを容認しました。

 

息子が命を絶った木(引用:Tansa記事)

 

息子が命を絶った木(引用:Tansa記事)

 

●増え続ける子どものいじめと自殺

いじめ防止対策推進法が機能していないことは、データからも明らかです。

2023年10月、文部科学省が小中高生たちのいじめ等に関する調査結果を公表しました。

2022年度の小・中・高・特別支援学校におけるいじめの認知件数は68万1948件でした。前年度から10.8%増加しており、子ども1000人あたり53件ものいじめが発生しています。

さらに、いじめの中でも、より深刻なケースである「重大事態」は923件で、前年度から30.7%も増加していました。

しかし、「重大事態」のうち357件が、重大事態として把握する以前にはいじめとして認知していなかったものです。これは、見逃されているいじめが多数あることを意味しています。

例えば、長崎県のいじめ認知件数は子ども1000人あたり15件で、全国的にかなり低い数字となっています。しかし長崎県は、息子へのいじめの事実を隠蔽しようとする学校側に加担した行政です。いじめに対する認識が甘く把握できていないために、認知件数が少ないのではないでしょうか。

実際、いじめを認知していた学校は全体の82%に留まっており、高校では40%以上が見逃されています。文科省は、「学校としていじめの認知に課題がある」との見解を示しています。

また、自ら命を絶った子どもは、年間411人もいました。自殺の原因は定かではありませんが、いじめ防止対策推進法は軽んじられ、学校がいじめを認知できていない状況では、相当数の子どもがいじめを苦に自殺していると考えられます。

 

文部科学省「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」より

 

文部科学省「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」より

 

●海外では、学校閉鎖も

なぜ、学校や行政は、法を蔑ろにできるのでしょうか。

それは、責務を定めていても、罰則がないからではないのでしょうか。学校も、自治体も、国も、何ら罪に問われません。

例えばスウェーデンでは、いじめの発覚により有名校が一時的に閉鎖になりました。

裕福なエリートの子どもたちが通う私立学校「Lundsberg boarding school」では、上級生が下級生に対して熱いアイロンでやけどを負わすなどの事件が起きました。検査官が学校を視察し、いじめ・暴力を防止する措置が取られるまで学校を即刻閉鎖することを発表しました。

アメリカでは、いじめに対して適切な措置を取らなかった学校が閉校しています。

マサチューセッツ州にある「Mission Hill School in Boston」がその一つです。子どもによるいじめ・暴力が発生した際、教職員はそれを止めず、報告すらしなかったこともありました。教育長は、教職員の解雇や学校への専門チームの設置などの措置を検討しました。しかし事態の重大性を鑑み、教育長は「速やかに閉校する」ことを提言しました。最終的に、州の学校当局が学校の永久閉鎖を決議しました。

 

●新たな犠牲者を出さないために

法制定から10年が経ちました。この10年間で、どれくらいの子どもたちがいじめで悩み苦しみ、自ら命を絶ったのでしょうか。

文科省や新設されたこども家庭庁は、今後もいじめ防止対策推進法等に基づいて対策をとっていくという方針を示しています。

いじめ防止対策推進法が、子どもをいじめや自殺から守る法律にならなければいけません。

本来の役割を果たしていない法律は、変えなければいけないのではないでしょうか。

しかし、残念ながら行政や学校現場からはそのような声が上がりません。だからこそ、私たちはこの署名キャンペーンを立ち上げることを決意しました。

法改正を求めて、集まった署名は文部科学大臣はじめ与野党に提出します。

一人でも多くの方のご署名をどうぞよろしくお願いいたします。

 

2016年4月、息子の海星高校入学式にて

 

2016年4月、息子の海星高校入学式にて

 

【参考】

【出典】

 

【関連記事】

 

 

 

今週は138人が賛同しました
現在の賛同数:29,011次の目標:35,000
今週は138人が賛同しました
このオンライン署名のQRコードです。スマートフォンなどの画面上で表示させるほか、ダウンロードしてチラシやポスターなどの印刷物に使うこともできます。QRコードをダウンロードする